篠原シャテル以布子

神奈川県横浜市生まれ。開業医の家系に育ち、幼少時より自然と人々の身体と心の健康について興味を持つ。フェリス女学院中学、および高等学校卒業。慶應義塾大学医学部卒業。その後、ロンジー音楽院(ボストン)にて、ピアノ科アーテイストデイプロマ取得。エコルノルマル音楽院(パリ)にて最終過程終了後、フランス、アメリカ、日本などで演奏活動を続ける傍ら、現在、パリ郊外に在住。ピアニスト、およびセラピストとしての活動をしながら、二児の子育て中。

わたしは常々物事の奥にある雰囲気や、言葉に出来ない事象に興味を持って疑問を持ちつつ生きてきました。幼少時から、自分が生まれる前に一体自分がどこにいたか、そのときに両親や周りの環境はどのような雰囲気だったのか、そんな事をぼんやりと考え、不思議な瞑想状態に入り込む癖さえもありました。今になって考えると、自分の身体に眠る記憶をひとりでに内に探していたように思えます。

大きくなるにつれ、気がつくと人の前に座って話を聞くことが多くなりました。対話の中で、前に座る人が少しずつ変容して行く様子を見て、敬意と共に、喜びを感じる不思議な子供時代をすごし、自然と進路は医師の道を進んでおりました。転換期には身体の症状や何らかの出来事により軌道修正がされ、気がつけば、フランスでmémoire cellulaire細胞の記憶という学問に出会います。

幼少時代から成長し、医学を学んでも、音楽に携わっても理解できなかった、それらのベールの奥にある何らかの概念を今やっと理解始めた、という気がしております。

細胞の記憶メソッドでは生まれる前18ヶ月の記憶(刻印)を常に探します。その超初期記憶は、私達の人生にある程度のテーマを色づけするのです。

とはいえ、細胞の記憶メソッドの目的は、妊婦さんも含め、親御さんが必要以上の罪悪感を持ち始めたり、神経質になるためではないのです。自分自身、長女出産時と違い、次女の出産時には、この学問の概要を学び、すでにセラピストとして活動しておりました。しかし、その妊娠、出産過程は大きく改善したわけではなかったのです。

それでは、何故学ぶ意味があるか。私は、それは意識を向けること、だと考えています。意識とは、言葉を変えるなら、曇りガラスでない透明なめがねをかける、という事です。

一人ひとりの人生の入り口に対する深い理解と畏敬、さらには人生の出口をいかにして迎えるか、そのことを模索する社会であるために、この学問は有益であると私は信じております。